事例・インタビュー

実証実験を通じて、現場実装にこだわり活きた技術に成長した顧客起点でのソリューション作り

西日本旅客鉄道(株)

継続と進化で目指す未来へ。西日本全域にわたる鉄道ネットワークを有する社会インフラ企業グループとして、安全への「変わらぬ決意」を原点に、西日本エリアの安全で 便利・快適な暮らしと、社会、経済の発展を支え続けていく。

■ 設立:1987年
■ 事業分野:運輸業・流通業・不動産業・その他

現場で使える技術を探していた

西日本旅客鉄道株式会社様では、「JR西日本グループ鉄道安全行動計画2022」を策定されています。その中にお客様の命をお預かりしている鉄道事業者としての責任を自覚し、社会に貢献する企業グループとして、使命感を持って鉄道の安全性向上に取り組んでいくというメッセージがございます。橋梁をはじめとする鉄道インフラの安心安全に関する新技術について、構造技術室に所属し研究開発を担当する堀様へお話を伺いました。

PC構造物の鋼材破断リスクは橋梁管理者共通の課題

› なぜSenrigaNを使ってみようと思ったのですか?

1970年代に製作した一部のプレストレストコンクリート(PC)構造物ではグラウト充填不良が起きています。この原因は、一概に施工不良ということだけでなく、施工当時の材料や施工方法といったいろんな背景があります。グラウト充填不良があると、やがて内部に入っているPC鋼材の腐食に繋がり、鋼材が破断する危険性があります。これは同じ時期に作られたPC構造物には共通して言えることで、当社や鉄道のPC構造物に限った話ではありません。道路橋を管理している自治体や道路会社、当社以外の他の鉄道会社も同じ問題を抱えているのが実態です。SenrigaNの実証実験を実施した橋梁には、今後モニタリングをどう進めていくかという検討をする中で、試験施工の対象として、外ケーブル張力モニタリングという鋼材の破断を検知するシステムを設置しています。鋼材の破断リスクがある中で、コニカミノルタさんからご紹介いただいたSenrigaNの技術が、鋼材破断の検知に使えそうだという話があったので、実際の橋梁で実証実験をするに至りました。

› 使ってみてSenrigaNをどう評価されましたか?

第一に、現場で扱える装置であること。次に、持ち運びが容易であることや、計測結果をリアルタイムにその場ですぐ確認できること。この点について高く評価させてもらっています。破断の事象というのは、急を要するので、現場ですぐに判断する必要がありますから。また、計測結果をクラウドでアップして、データ共有が即座にできることなど、大変使いやすいという感触を持ちました。また、鉄道を走らせるための電気によって生じる磁気変動の影響を受けない磁気センサへの改良も実施して頂きました。このような、コニカミノルタさんによるSenrigaNの継続的な開発・機器改良によって、破断検知ということに関して、現場で実現できるレベルにきたことを、実証実験を通じて実感しました。その一方で、このSenrigaNの技術を現場でどのように活用していくかという点については、橋梁が劣化していくプロセスにおいて、どのように適用していくのかといった、本質的な検討が必要であるというのが正直な感想です。

› 他の手段はご検討されましたか?

まず、グラウト充填不足については、削孔調査を行っています。削孔調査をして、グラウト充填不良があれば、グラウトの再充填を実施します。削孔調査の際に、ファイバースコープによって内部状況を直視できますので、直接目視によって鋼材劣化の状況を確認しています。削孔して目視で破断が見つかったという事例が、今までなかったので、急いで鋼材破断検査を実施するというまでは、現場のニーズとしては少し薄いかな、という感触は正直ありました。しかし、いずれそういう鋼材破断のリスクは顕在化すると思っています。現場を意識し、今後の維持管理の在り方の検討や技術開発を行う部署としては、橋梁の耐荷力にとって重要であるPC鋼材破断検知の技術は開発しておかなければいけない技術であると考えています。
元々存在していた漏洩磁束法による破断検知については、当社では実証実験するに至っていませんでしたが、いろんな点検技術を模索、検討していく中でコニカミノルタさんの技術を知る機会があり、説明をうける中で、今回活用してみようという話になりました。

› 新技術を採用するプロセスとはどのようなものでしょうか?

以前は、お付き合いのあるメーカーさんからの技術導入を中心に検討していた時期もあります。今回SenrigaNを活用した実証実験を決めた時期は、コロナ禍前であり、JR西日本でもオープンイノベーションにチャレンジをしていこうという機運が高まっているタイミングでした。当社の検査ニーズを満たせそうな技術があれば、新技術をどんどん活用していこうという流れがあったのも大きかったと思います。コニカミノルタさんも、特にインフラメンテナンス分野での経験が長い会社ではないですが、そういうことは問わず、使えそうな技術を探していたところに、コニカミノルタさんからお声がけをしてもらったという感じです。

› 新技術を採用する際に必要なことは何でしょうか?

室内での実験ではうまくできても、現場ではうまくできないというような課題は、必ず出てくるものです。どんなプロセスで出会った技術であっても、現場で必ず試さなければいけないという意識を強く持って情報を収集するようにしています。

› 今後、非破壊検査をどのように活用していきたいとお考えですか?

非破壊検査技術でいうと、SenrigaNの技術を使ってPC構造物を検査対象として試してきましたが、当社の構造物は、通常の鉄筋コンクリート(RC)構造物も多数あります。RC構造物は、PC構造物と同様に高度成長期に多く作られているので、不具合はRC構造物にも発生しています。鉄筋の腐食を原因とするひび割れ・剥落が、多いのが現状です。そういう意味で、維持管理する側としては、非破壊で鉄筋腐食を検知する技術というのは、欲しい技術ですね。

› ありがとうございました。