事例・インタビュー

自治体のインフラメンテナンスにおけるSenrigaNへの期待

福岡市 様

福岡市は九州を代表する政令指定都市であり、多くの人口や産業が集中する九州の中心都市である。また、九州各都市をつなぐ道路交通網の要にもなっていることから数多くの橋梁等構造物インフラの管理を行っていることも特徴のひとつである。

【人口・面積】 1,620,758人 343.46km2 (2021年9月現在)
【管理道路長】 3,875km (2021年4月現在)
【管理橋梁数】 2,031橋 (2021年4月現在)

効率よく点検できる技術を探している

高度成長期に数多く建設され、今後老朽化が急速に進むことが懸念される橋梁の維持・管理が、全国の自治体で大きな課題となっています。福岡市では、この課題に加え、海沿いの地勢や台風といった変化に富んだ気候など、橋梁構造物に与える影響について考慮すべき点も数多くあり、安全を確保しながら低コストで管理・点検できる技術の出現を待ち望んでいました。このような状況の中、内閣府主催の「内閣府オープンイノベーションチャレンジ2019」を通じて、福岡市とコニカミノルタは、「橋梁劣化状況の効率的な点検の実現」をテーマとした実証実験を行うに至りました。
この時の福岡市の担当の方へお話を伺いました。
(以下、メールと電話でのヒアリング内容を中心に記事化させていただきました)

道路橋の鋼材破断リスクは自治体の構造物管理における共通課題

› なぜSenrigaNを使ってみようと思ったのですか?

一番は、経済性です。橋梁の定期点検は5年に一度の頻度で実施するよう道路法施行規則の中で定められており、今の制度が続く限りは、継続的に費用が掛かってくることになります。福岡市で管理している橋梁数は2,000橋を超え、橋梁の点検費用は相当な金額になります。この費用を抑えていく必要があり、併せて業務の効率化も必要です。費用と共に人手もかかりますので、効率よく点検することは、非常に重要な要素となります。ドローン等の新技術の活用については、技術により活用できる橋梁の形状(桁下が平らな橋梁等)や現場条件に制約があり、経済性も考慮すると全ての橋梁をドローン等の新技術で点検するには、まだ課題があると認識しています。
これまでの点検業務において、鋼材破断の懸念がある損傷が見つかってなく、特に問題視していたわけではありません。しかし、今後、さらに橋梁の老朽化が進んでいくことを考えると、鋼材破断検知の技術も必要になってくると認識していました。そこで、コニカミノルタのSenrigaNを用いた点検により効率よく作業することで、点検費用を抑えたいという思いがありました。

› 使ってみてSenrigaNをどう評価されましたか?

人の目やハンマーで叩いて損傷を確認する近接目視点検では、内部鋼材の破断状態を把握できませんが、SenrigaNは人の目で確認できない内部鋼材破断を非破壊で確認することができるほか、短時間で結果が分かり、市職員でも機材を手軽に扱えることが実証できました。
初めてSenrigaNを使うという場合でも、リモートで遠隔サポートしてもらいながら安心して計測ができることや、機材が軽くて扱いやすいところも魅力だと感じました。現場でピッと測ってすぐに結果がその場で分かるというのも大きな魅力だという印象を持ちました。実際にSenrigaNで計測を実施した橋は、状態が良い方の橋梁だったので、幸い内部鋼材が破断しているという結果は確認できませんでしたが、他の現場でも使っていけるのではないかと感じています。非破壊で、内部鋼材の破断状態を簡易に確認できる技術は、画期的な技術だと感じました。

› 非破壊検査技術の他に新技術活用のご検討はされましたか?

内閣府オープンイノベーションチャレンジ2019の他にも福岡市では、民間事業者の先進的なアイデアやAI・IoT等の革新的技術を活用して、社会課題の解決等を促進するワンストップ窓口「mirai@」(ミライアット)を設置し、民間事業者との共働によりプロジェクトを創出する「民間共働事業」のご提案を随時受け付けており、点検の効率化を図ることを目的として、ドローン等を活用した橋梁点検支援技術の実証実験を令和2年度に行いました。
実証実験では、ドローンを用いた点検技術や橋梁点検支援ロボットを用いた点検技術、自動図面作成技術、モニタリングカメラを用いた状態監視技術と様々な新技術の点検精度等の確認を行い、今後の橋梁点検の効率化やコスト縮減へ向け検討しています。

› SenrigaNを使って、今後、具体的にはどのような検査をご検討されていますでしょうか?

近接目視点検で発見した損傷懸念部分を、さらに詳細に調査したい場合など、点検の次の段階の詳細調査で非常に有効であるのではないかと、SenrigaNを使った実証実験を通じて感じました。今後、点検時に内部鋼材の破断が懸念される橋梁が見つかった場合に詳細調査でSenrigaNの活用を検討したいと考えています。

› 今後の展望(長期的)について教えてください

SenrigaNを使用することで内部鋼材の破断を早期発見し、構造物の機能不全を未然に防ぐことができるため、今後、橋梁だけでなく、その他の道路構造物への展開を期待しています。

› ありがとうございました。