事例・インタビュー

ひびのない部分も含め、体感的には推測より3割多く破断が見つかりました

株式会社ウエスコ

「未来に残す、自然との共生社会」を経営理念に掲げ、技術、創造力、実践力を集結し、統合された組織力で「真の豊かさが実感できる国土」の実現に貢献する建設コンサルタント企業。

■設立

1970年

■事業内容

測量、地理情報、補償調査、施工管理、地盤調査、環境設計、上水道、環境計画・調査、社会基盤デザイン、都市計画、農林振興など

損傷が見られると内部の健全度が心配になります

2020年に創立50年を迎えた株式会社ウエスコはインフラ整備を通じて地域社会の発展とともに成長してきました。ウエスコの構造設計課では新設、補修、点検、補強の4つを軸として社会に貢献されています。今回は年間100橋前後の点検や補修設計を行う、株式会社ウエスコ 広島支社 構造設計課に所属される田淵 聡郎様にお話を伺いました。

補修の方向性を判断するため今回の現場には必要不可欠な調査でした

› なぜSenrigaNを使ってみようと思われたのですか?

今回の橋は補修設計業務で受託していました。H27年度の点検で健全度Ⅱだったものが今回の判定で健全度Ⅲに劣化が進行し、PC桁のひび割れや錆汁など早急に対策が必要であるという判定になっていました。そのため、塩分量調査などコンクリートそのものの調査も実施しましたが、それだけでなく、内部の劣化も疑われ、構造物として大丈夫なの?という不安から、何か提案したほうがいいと考えていました。PC橋のプレテン桁なので、表面に近い鋼材が破断していると耐荷力の問題がでてきます。しかし、むやみにはつって調査すると逆に痛めてしまうので、非破壊で内部を知る技術がないか探していました。ちょうどそのタイミングでコニカミノルタさんからご紹介を受け、使ってみることにしたのです。

› どういったプロセスで利用に至ったのですか?

発注元からも点検だけでなく補修設計でも点検支援技術の活用について検討してほしいと言われていました。実は検査実施のタイミングではSenrigaNの技術は点検支援技術性能カタログに申請中で掲載が決まっていたわけではないのですが、申請中であることも加味して発注元に提案しました。また、NETISに載っているかどうかも大事です。NETISに載っていたので発注元もスムーズに了解してくれました。また点検支援技術性能カタログに、比較対象になる他の技術がなかったので利用に至りました。

› 管理者様はSenrigaNの利用についてどのようにお考えでしたか?

損傷が発生している場合、内部がどうなっているのか、耐荷性能が低下していないかは管理者様も心配されるところです。はつりもせず、破壊もせずなんらかの補修の方針を出したとしても、本当に中は確認したのかという話はでます。一方、特にPC橋においてはむやみにはつって確認するのは良くないと管理者様も理解されています。そういう難しい判断を迫られる中、非破壊技術を活用した調査はニーズに合致していました。 損傷が出てしまっているものに対してはどうにか直していかなければなりません。注入か補強かなどの判断のために内部を確認するというのは必然であり、弊社の提案に対してなぜやらなければいけないの?という話になることはありません。方向性を判断するために今回の現場では必要不可欠な調査でした 。

今まで破断していないと思っていたところが破断していました

› 使ってみてSenrigaNをどう評価されましたか?

破断の場所がわかってよかったです。精度に関しては最初に確認しました。一か所すでに著しく浮いている箇所をはぎとり、断面復旧した場所があったので、そこで検証しましたが、きちんと破断しているという結果がでたので答え合わせができました。比較的精度高く破断の有無を確認できるなと感じ、その後の調査を行いました。内部を見られない部分の損傷を把握でき、設計に有効に活用できたと考えています。 耐荷力を計算するには、破断の位置や本数をきっちり抑えることが非常に重要です。破断個所に基づいて、耐荷力を計算し、補強すべき桁とそうでない桁を判別し、適切に補強を施すことができました。 課題は座標の抑え方ですね。SenrigaNで計測すると計測した座標とどの位置に破断があったかが自動で記録されたら理想的です。また、今回は詳細調査で使いましたが、点検でも使えるといいですね。点検においても点検支援技術の活用が求められています。点検の場合は全面ではなく部分的に数か所調査してみるだけでも良いので、コスト的に見合うサービスを提供いただけたら良いと思います 。

› 非破壊技術がなかったときはどうされていましたか?

今までははつって確認していました。はつって破断や減肉を確認したときは、損傷の状態を参考に他の箇所も同等の損傷であるとして安全側で補強の検討をしています。外部変状があるところを全てはつると橋そのものを痛めてしまうので、代表的な箇所を抽出してはつるようにしていました。

› 今までの経験則とSenrigaNの結果に違いはありましたか?

主観的な評価になりますが体感では3割くらい多く破断していました。ひび割れがないところや軽微なひび割れでも破断が見つかりました。これまでは軽微な錆汁を伴うひび割れの場合は破断を疑わないケースもありました。見た目にちょっと錆汁がでたくらいと考えていたところが実は破断していたんだなと、やってみてわかりました。PC鋼材で常に緊張力がかかっているため、少しでも腐食したら一気に破断しやすいということも考えられ、このレベルでも破断しているのかと思いました。

› 破断があった場合はどうされるのですか?

塩害が激しい地域では補強とは別に塩害対策を施さなければなりません。特に本橋では塩化物イオン量が腐食発生限界を超えていたため、グレードの高い塩害対策を施す必要がありました。補強のために桁の下面に補強材を貼ってしまうと、塩害対策ができなくなってしまいます。そうしたことも勘案し、全体の破断箇所での耐荷力を計算して、必要な個所にだけ補強対策を実施しました。

› 今後、非破壊検査をどのように活用していきたいとお考えですか?

今回と同じようなプレテンPC床版、プレテンT桁やポステン床版横締め、トンネルPC床版など、その他SenrigaN で検査できるケースでは使っていきたいと思っています。腐食の検知など周辺の技術と組み合わせたらいいなと思います。SenrigaNとその技術で全体的に錆びや破断がわかるようになると構造物としての耐荷性能を評価でき、場合によっては架け替えの判断の一つの指標になりうると思います。

› ありがとうございました。