事例・インタビュー
「現場ですぐに検査結果が得られる非破壊検査技術SenrigaNへの期待」
広範囲にスクリーニングして破断の見逃しを減らすために使いました

土木・建設分野における技術コンサルティングとエンジニアリングサービスを提供する長大の中で、既存構造物の点検や調査を行っています。
今回は、中国エリアで点検や補修設計を行う、株式会社長大 広島支社 構造事業本部 第2構造事業部の野村 肇様にお話を伺いました。
非破壊検査で内部鋼材の破断検査が可能なSenrigaN
› 長大広島支社様では、塩害橋梁を対象にSenrigaNの検査を2022年、2023年あわせて8日間実施されています。なぜSenrigaNを使ってみようと思われたのですか?
理由は2点あります。1つ目は、磁石を使った検査がどのような技術なのか興味があったことです。2つ目は、非破壊検査で内部鋼材の破断検査が可能なことです。橋梁を傷つけるリスクなく、他の調査技術に比べ比較的素早く鋼材の状況を把握することが可能なため、広範囲を調べたい今回のようなケースにはSenrigaNが最適と考えました。
(鋼材破断時)破断箇所に生じる特有な波形を現地確認できたことは良かった点です
› 実際に使用してみて、SenrigaNをどのように評価されていますか?
鋼材の破断位置に、破断時に生じる特有な波形が実際に確認できたのは良かった点です。SenrigaNは手軽に現場で迅速に検査結果が得られる点もよいですね。
一方、波形の検査結果が示されますが、理解が難しく感じています。今後の開発の課題として、受け取り側がより簡単に分かりやすい見せ方や説明等、工夫をして頂けると、SenrigaNはさらに普及していくものと、感じています。期待も込めて今後の技術的な要望として、連続したデータから鋼材破断の位置が3Dで可視化されると良いと思います。
点検支援技術性能カタログに掲載済みの技術なので信頼性もあります
› 他の手段と比較していかがでしたか?
鋼材露出させる、はつり出し調査がありますが、微破壊を伴います。主桁は緊張状態の中でバランスしています。はつり出しに伴い、そのバランスが一部崩れるため、多くのはつり出し調査の実施は主桁耐力低下等懸念が多く、橋体へ悪影響を及ぼすものと考えます。
非破壊検査では、唯一放射線調査がありますが、準備が大変で橋面上に立入禁止区域の設定(放射線量等状況により一時通行止め含む)等を伴うと聞いたこともあり、実用面で限界を感じています。
SenrigaNは制約なく容易に使用可能なことと、点検支援技術性能カタログに掲載済みの技術で信頼性もあり、他に比べ優位性は高いと感じています。
塩害地域で錆汁を伴うひびわれや再損傷が確認できる現場では使用を推奨したい技術
› 新技術SenrigaNを採用に至るまでのプロセスとはどのようなものでしょうか?
内部鋼材に異常がある、と考えられる現場では使用を推奨したい技術と考えます。今回の活用にあたっては、「(山間部含む)塩害地域で、錆汁を伴うひび割れや、過年度補修箇所の再損傷(うきや剥離・鉄筋露出)」が認められる橋梁の定期点検に偶然遭遇し、早速SenrigaNの活用に踏み切る動きを加速させ、当事者の橋梁管理者に対し「鋼材の破断が疑われるので、今すぐに検査で確認したほうが良い」という申し出を行いました。微破壊および非破壊で実施可能な各種調査と本技術SenrigaNで対比した結果、新技術SenrigaNの採用に至りました。
› 新技術を採用する際に必要なことは何でしょうか?
世の中に技術を理解してもらうこと、該当する各種構造物の管理者へPRを行うと同時に検査技術の向上を追求すること、と思います。そして事例を積み重ね、世の中へ周知し、実績を増すことで、新技術採用の向上に繋がるものと考えています。
SenrigaNで広範囲にスクリーニングをすることで破断の見逃し防止に繋がる
› 非破壊検査技術が無かったら、どのような対応をされていたと思いますか?
はつり出し調査で対応していたと思いますが、はつり出し調査となると具体な条件設定(例えば、どの機器でどの損傷が確認できたらはつり出し調査を行うか、等)が困難なため、見逃しや見落としが出ていたかもしれません。その点、SenrigaNで広範囲にスクリーニングをすることで見逃しや見落としが少なくなると思います。
今回は広範囲を調べられたことで、鋼材破断に関する詳細な情報を得ることが出来ました。想定していた状況とは異なることがわかり、適切な処置を施すことが出来ました。
今後、非破壊検査SenrigaNをどのように活用していきたいとお考えですか?
手軽に素早く調査可能という特長を活かして、スクリーニングとして使用したいと考えています。非破壊検査だけで橋桁内のすべての鋼材破断有無を100%正確に判定するのは難しいと考えていますが、ある程度の判断をSenrigaNで行い、破断疑いがある箇所は、ピンポイントで他の技術を組合せた合わせ技でPC鋼材破断を確認したいと考えています。