事例・インタビュー

点検支援技術性能カタログに内部鋼材破断検知で唯一掲載されたSenrigaN

大日本コンサルタント株式会社

「美しく魅力ある国土の建設と保全」「安全で快適な住まい環境の創出」を経営理念に掲げ、確かな技術力で橋梁、道路、都市、下線、港湾など、国内外の様々な社会資本整備の計画・設計を行う大手建設コンサルタント

■設立

1955年

■事業分野

計画・設計技術をコアに、事業の企画から運営・管理まで社会資本整備事業全般

損傷がないことを確認するために検査しました

社会資本整備事業全般を請け負う大日本コンサルタントの中でも、技術室では主に橋梁やその他構造物の計画設計、維持管理を行っています。
今回は年間100橋前後の点検や補修設計を行う、大日本コンサルタント株式会社 九州支社 沖縄事務所 技術室に所属される川島 将太様にお話を伺いました。

点検支援技術性能カタログに載っていることが大きいですね

› なぜSenrigaNを使ってみようと思われたのですか?

沖縄県は土地柄、塩害に対して非常に厳しい環境です。また、PC橋の鋼材腐食は橋の耐荷力に大きく影響します。今回、計測対象となった対象橋梁は事前の近接目視点検の結果より、外観の劣化損傷が確認されました。また、供用年数が古く、海岸線から近接しており、内部鋼材に損傷が生じていることが懸念されたため調査対象として選定しました。後付けされた排水管の近傍で、モルタルの剥離及び内部鋼材の腐食が目視で確認できたため、他の場所も同じように劣化しているのかどうかが心配でした。内部の状態を正確に知り、PC鋼材の健全性の評価をしたかったのです。
別の観点では、発注者の意向として何かしら点検支援技術を使いたいというのがあります。そのためSenrigaNが点検支援技術性能カタログに掲載されているというのは大きいです。また、今回はその他の技術で適用できるものが少なかったというのもありました。内部鋼材破断を検知する技術としてカタログに掲載されているのはSenrigaNが唯一であり、本案件の技術的ニーズと合致していたため利用することにしました。

› どういったプロセスで利用に至ったのですか?

やはり点検支援技術性能カタログに掲載されていることが大きいですね。最近では新技術の採用を検討することが国から義務付けられており、新技術利用ガイドラインにのっとって採用を進めています。発注者とディスカッションする中で求められた点検支援技術使用計画書を作成し、発注者・受注者、双方が納得した形で採用を決定します。他の技術との比較も必要で、そこがクリアできれば発注者も採用しやすくなります。
採用したい技術が点検支援技術性能カタログに載っていない場合は、カタログに載っている技術との比較になり、発注者に納得いただくためのエビデンスが必要になります。そのため、まずはカタログに載っている技術から検討していきます。SenrigaNはカタログに掲載されているため提案がスムーズでした。

› 使ってみてSenrigaNをどう評価されましたか?

良かったのは計測装置が3.4キロと軽量・コンパクトで使用感が良い点です。女性技術者でも使いやすいと思います。また、その場で計測したデータをすぐに確認でき、必要なら計測のやり直しも容易にできる点も良いと思いました。実際に現場でデータを確認しながら、構造上検査しにくい場所などは複数回色々な向きで計測するなどの追加計測を実施しています。さらに、操作自体も簡単で、着磁して、計測装置を橋に当ててボタンを押すだけ、1回の計測も数秒で終わるので、要領さえわかれば1日で多くの面をスピーディーに計測できる点も高評価です。
課題は計測した分、データが出力されるので処理に労力を要する点です。波形の判読には時間と経験が必要ですので、自動判定などの技術があれば大変助かります。また、足場の条件によっては人手や時間を要してしまうことも課題かと思います。

SenrigaNの利点は大規模な設備や交通規制を必要とせずに内部変状の有無を確認できることです

› SenrigaNがなかったらどうされていましたか?

PC鋼材の損傷を確認する従来の方法としては、主にはつり調査やX線調査など大規模な調査があります。しかし、どちらもコストがかかり、特にはつり調査はPC橋の耐荷力にも影響を及ぼすことが懸念されます。また、はつり調査を行う際は変状がある付近しかはつらず、それ以外は、変状が同等のところは損傷も同等というように推測するしかありませんでした。

› SenrigaNがなければ今回ははつっていましたか?

今回は、近接目視の結果から、はつり調査の実施を判断できる程の外観変状はありませんでした。そのため、ある意味損傷がないことを確認するために検査を行いました。SenrigaNは完全非破壊かつコンパクトなので、大規模な設備や交通規制を必要とせずに、内部変状の有無を確認できることが利点かと思います。

› 破断があった場合はどうされるのですか?

まずは耐荷力を評価する必要があります。破断の規模などを把握し、残存耐荷力を推定します。残存耐荷力を推定する際に、評価精度あげるためには何か所もはつることになります。それに対してSenrigaNでは、1か所だけはつって、答え合わせをし、きちんと破断が検出できるため、他の箇所ははつらず、SenrigaNのデータで破断の有無を把握することができます。今回鋼材の損傷は1か所だけでしたが、桁によって破断位置が変わってくる様子などもわかると、計算精度が向上すると思っています。最終的に補強をする際、通常は安全側に補強していきますが、破断位置と量が特定できると過度な補強をせず、トータルコストを縮小することができると思います。

› 今後、非破壊検査をどのように活用していきたいとお考えですか?

今後もPC橋の耐荷力を調査するためSenrigaNの活用を検討していきたいと考えています。外部変状がないまま、グラウト充填不足などが要因で内部鋼材が損傷していることもあります。そういった場合は全体的に調べて破断の有無を確認できたらと思います。
他にも非破壊で全てわかるのがベストだと思っています。コンクリート強度や、鋼材の錆、破断の本数やプレストレスの減少量など設計に必要な数値が得られるとありがたいですね。

› ありがとうございました。